理研RCAI免疫系構築研究チームのチームリーダー大野博司先生、米国エモリー大学医学部准教授のイフォー・ウイリアムズ先生との共同研究の成果が、
Nature Immunology, advanced online
publicationに掲載されました。 yahooやgoogleニュースのヘッドラインにも掲載されましたのでご覧いただいた方もあるかと思います。
腸管内では、食物や微生物から我々の身体を防御するために、パイエル版などの免疫組織が発達しています。腸管粘膜は腸管上皮細胞から構成されていますが、その中で特に腸管免疫組織を覆う部分には、微生物を取り込み、免疫組織へ受け渡しすると考えられているM細胞が分布しています。しかし、このM細胞の機能的意義、分化のメカニズムにはまだわかっていないことがたくさんあります。
今回、Spi-Bと呼ばれる転写因子が、このM細胞の分化に必須であることを発見しました。RANKLという分泌タンパク質を投与するとM細胞の分化が誘導されます。投与後1-4日で種々の遺伝子の発現が上昇しますが、Spi-B遺伝子は投与後1-2日をピークに誘導されました。そこでSpi-B遺伝子欠損マウスを解析したところ、機能的なM細胞の分化が障害され、投与後後期に誘導される遺伝子群の発現が障害されていました。また、Spi-B遺伝子欠損マウスにネズミチフス菌を経口感染させると、パイエル板への取り込みが減少し、その菌に対するT細胞免疫応答も低下していました。
このように、Spi-B遺伝子欠損マウスは、M細胞欠損モデル動物として活用できるようになるため、M細胞の機能的意義の解明に大きく貢献することが期待されます。また、Spi-B遺伝子欠損マウスは、病原体の腸管感染機構の解明はもちろん、M細胞を標的とした経口ワクチンの開発にも非常に有用であると考えられます。参考1:阪大研究成果リリース
参考2:nature immunol の論文頁へ